正しいスウェーデン人になるために:その4

 

過去のレポートを記憶している人ならこの題名を読んだだけで、このレポートが何について書かれたものかおわかりだろう。

スコーネ人にとってデンマークへの酒買出しはごく普通のことだが(注:みんながみんなやっているというわけではない)、ドイツも忘れてはならない。スコーネの新聞ではドイツの安売りスーパーの広告は見慣れたもんである。

今回のドイツ行きが決定したのは、旅の前日。運良くミニバスも借りることができ、私達は当日午前1時半にルンドを出発した。

買出しツアーのメンバーは私を含めて7人(うち6人がスウェーデン人)。この旅は約1ヶ月ほどまえからうちのス人の兄が計画を進めており、実行が決定した前日の夜なんかは浮かれすぎてお酒の歌(自作)を歌いまくるほどだった。アホでごめんなさい。

パスポートって何ですか?

通常デンマークへ買出しに行く時、ス人達はパスポートなど持たない。身分証明書(運転免許書含)で十分。私も運転免許書があればいいといわれているが一応パスポートは持っていく。今回はドイツなので、これはパスポートは確実に必要だろう。。と思い、一応「ねえ、私はパスポートは持ってたほうがいいよね。」と聞いたところ、うちのス人母はすごい声で「パ・ス・ポートォ!」と叫んだかと思いきや、突然財布の中を探し始めた。そして偶然持っていたらしく安堵の声をもらしていた。が、「でもお父さんはパスポートなんて持ってないわよ。」という衝撃の一言。

ドイツへ行こうとするのに、この緊張感のなさ。ま、なくてもいいんだけど。

それからうちのス人父は警察へ電話して聞いたり(ドイツへ明日行くんですが、パスポートは持ってたほうがいいですかねぇ等)、先日ドイツへ行って来たという親戚に電話したり(ねえ、ドイツへ行った際、パスポートを見せる必要があったかい?等)して検討した結果、不所持で行くことが決定。スウェーデン人のアルコールにかける思いは国境をも越える。ちなみに今回の旅では参加メンバーのうち、もう一人のス人がパスポートを持っていなかった(探し出すことができなかったらしい・・これまたすごい理由だが)。

予定通りルンドを午前1時半に出発し、目指すはフェリー港・Trelleborg(トレレボーイ)!

フェリーに乗り込む

7人を乗せたミニバスは約45分の運転でトレレボーイの港に到着。乗船手続きを済ませ、船を待つ。出航は3時15分の予定。夜中だというのに結構な数の車が待っている。

しばらく待って乗船開始。ここでもパスポートチェックなどは全くなし。一同はとりあえずほっとし、車を後にしてフェリーの中へと向かった。

船の中は普通のフェリーだ。カフェコーナー、みなが自由に座ることができるテーブルや椅子のあるスペース、そしてドイツ値段で商品が売られているお店(免税店ではないけどスの値段に比べるとやっぱり安い)などがあり、私達は禁煙と書かれているテーブルについた。禁煙コーナーといっても数メートル向こうはすでに喫煙コーナー。特に仕切りもないので、禁煙コーナーの意味があるのかどうかは不明。

船が動き出した3時半(ちょっと出航が遅れた)にとりあえずコーヒーで乾杯。これからドイツまでは3時間強の船旅。船の中で食べ物を買うとそれだけで高く付き、安いお酒を買いに行く意味がなくなるので、もちろん自前コーヒー。ポットと保温水筒に満杯にしてきたが、7人で飲むと一人1杯いきわたるのが限界。それでも冷えた体には暖かいコーヒーは何よりの幸せ。午前6時頃、前の晩作ったサンドイッチをみんなで食す。7人分なのですごい量のサンドイッチだったが、みんながバクバク食べてくれると作り甲斐もあるというもの。早朝まだ暗い中、私は目もろくに開けずにタマゴサンドをほうばった。もうすぐ到着。

隊をなすスウェーデン買出し旅行者

フェリーは朝7時頃、ドイツのサスニッツ・Sassnitsに到着。ここでのパスポートチェックもなし。私達はするりと検問のようなところを過ぎ、一般道へでる。私にとって初めての旧東ドイツ圏。やっぱりなんとなく寂しい感じもする。港町だからか?私達がめざす店はバーゲン・Bergenにある「real」というスーパー。

やはり目的地が一緒なのだろうか、フェリー乗り場からバーゲンの町までしばらくSというステッカーを貼った車が連なる(スウェーデンの車ですよ、という目印。デンマークはDK、ノルウェーはNなどヨーロッパには色んなシールがある)。まるで隊をなしているキャラバンのようでもある。目指すはシルクロード!ではなくreal!バーゲン!激安天国へ!

フェリーを出てからバーゲンまでは小1時間の旅。途中工事中のため通れない道に遭遇したりもしたが、開店15分前に無事到着。しばし車内にて休憩をとって待つ。午前8時、時間通りに開店。踊る心を抑えて店内に入りこむスウェーデン人6人と日本人1人。

魅惑のスーパー

中に入って驚いた。その品数の豊富さ、私が住んでいるルンドのスーパーとは比較できないほどなのだ。広い店内にとても整然と、しかも楽しく商品が配列されており、パンのコーナーからは焼きたてのパンの香りがアクセントとなって漂ってくる。うーん、とれびや〜ん☆どうしてドイツなのにフランス語が出てくるのかはわからないが、それほど感動していたというわけだ。

私が睡魔に襲われながらも肉コーナーから野菜コーナー、そしてハムやチーズの類、そしてアルコールのコーナーへとなめるように進んで行った時には、すでにほとんどのスウェーデン人はこの最後のコーナー(つまりアルコール)に群がっていた。嗚呼、悲しいかな瑞典人。どうやら他の楽しいものは目に入らないらしい。酒は彼らに任せて、私は再び店内をくまなく物色。ああ、今思うと、あの眠気さえなかったら、もっと色んなものを落ち着いて見ることができたのに!と睡眠不足が悔やまれる。次回は絶対に睡眠は確保して行きたい。

少なくともこのドイツのrealという、スーパーの入り口から入って一番奥にあるアルコール売り場の一帯では、スウェーデン語が通じる現象が起きている。しかもこんなに広々とした店内なのに、アルコールのコーナーだけは、ショッピングカートの渋滞さえ起こっている。

その品揃えにも驚いたが、もう一つ驚いたのは店員さんの態度。ドイツの店員はサービスを知らないといううわさはよく聞いていた。今回も意地悪されてドイツ語しか話してくれなかったらどうしよう、とか、質問しても無視されたらどうしようとか、私達は恐れていた。しかし少なくともこの店の店員さんはそうではなかった。悪態をさらすスウェーデン人(私がいうのもなんだけど、本当にみんなハイエナのような妖気が漂っていた・・あ、あるいみ親しみを込めてね:汗)にもあきれることなく商品の説明をし、つたない英語まで一生懸命話そうとしてくれる(いや、私より確実に上手だけど:笑)。私(私達)が持っていたドイツ人店員のイメージをこの店は見事砕いてくれた。このままがんばって欲しい。

買い物が済んだらさっさと帰るス人達

買い物を無事済ませたス人達は再び港へ車を走らせる。ス人の酒買出しツアーには「観光」という2文字は存在しない。デンマークやポーランド、そしてドイツへ来る目的はタダ一つ、「お酒を買うこと」。余計なことはしない。最初は驚いた私だけど、もう慣れてしまった。というよりも後から後から襲ってくる睡魔でもう観光どころではない私だった。

フェリーの時間までまだ時間があるということで、もう一軒だけスーパーを巡るが、ここはrealほど安くはない。メンバーのうちのほとんどが先ほどの店で買いたいものは購入済みなので、ここは買い残したものがある人のみショッピング。ここでも私以外スウェーデン人がアルコールコーナーにたむろっている間、スの半額のモッツァレラチーズ(正確に言うと、ルンドではいつも通常の店の半額の安売り店で買っているので、ルンドのレベルから計算すると4分の1の値段)や洗濯時の柔軟材(詰め替え用)、リッターチョコのみたことない種類など邪道な道をひた走る。

ここでの買い物もつつがなく済ませ、今度こそ腹をくくって港へ向かう。途中再び安売りスーパーの看板に誘惑されそうになりながらも、もう十分買ったよと自分達を納得させながら早めに乗船手続き。

しかしここで再びアクシデント発生!船に乗り込むべく車を所定の位置に止めて待っていると、24本入りのビールケースを抱えた老若男女がターミナルビルのほうからこの駐車場にどんどん歩いてくる。はじめ彼らがなぜこのような大量のビールを抱えて歩いているのかわからなかったが、うちのス人父が通り過ぎる人に質問。すると、ターミナルビルの中の売店では船で買うよりさらに安いビールが売られているとのこと。だから大人も子供もみんな総出で最後にしこたまビールを買い込んでいたというわけだ!

私達も運転手以外の6人で急いで外に飛び出しターミナルビルへと急ぐ。いつ乗船が始まるかわからないので、とにかく選んでいる余裕なんてない。できるだけ多くのビールを運び出す、それが私達の使命だった。

6人で合計240本(330ml)のビール購入に成功。本当はみんなもう一回行きたかったのだが、その時はいつ車を船に乗せなくてはならないのか全く予想がつかず、断念。実際その時間はその後たっぷりあったために悔やまれる。

最後のあがき、そして船は酔っ払いを乗せて一路スウェーデンへ

ターミナルビルの激安ビールに名残惜しさを残しつつ、乗船。車を止め船内へと移動する。みんなの疲れは頂点に達し、メンバーのうちの一人は船内に入ってきたと同時に通路に横たわり、そのまま寝てしまった。そのうち一人また一人と次々に通路に倒れこむメンバー達。私は一応乙女の恥じらいがまだ残っていたので、煙にまかれながら椅子に座って船を漕いでいた(←でもこれも結構恥ずかしい)。

船内は行きと比べると酔っ払いの数が圧倒的に増えていた。買出しという仕事も終え、後は帰るだけという安堵感からだろうか、みんな大声でビール片手に話しをしている。通路を歩くおじさんも千鳥足の人が増えてきたり、うちのス人母に酔っ払いのカップルが話しかけて歌まで歌いだすわ、私は煙にまかれ寝るに寝れず甲板へ逃げ出すが、そこは氷も張っている極寒の世界。とにかく早くスウェーデンに到着することだけを祈って耐え忍んだ3時間だった。

さてドイツ側のターミナルビルでの買い物に不完全燃焼な私達は、ここで念押しの最後の買い物をすることに。ターミナルビルのビールの値段に比べると割高だが、それでもスの酒屋の値段に比べると安い。一番安いビールがなくなる前にみんなで10ケース近くのビールを買い込んだもんだから(ビール240本)、それからの移動が全くできず、私達は地蔵のようにじっとスウェーデン到着を待った。

安住の地へ

やっとの思いでスウェーデン到着。しかしゆっくりはできない。レンタカーを返す時間が迫っている。一同は一路ルンドを目指す。

ルンドに到着後、とりあえず戦利品をミニバスから全て降ろし、うちのス人父が自家用車にて友人達の荷物と彼らを家まで送る役目。その間、私とス人はミニバスを返しに行ったというわけだ。

時間通り無事バスを返すことができ、帰りはバスの後ろに積んでいった自転車にて帰宅。もうろうとした意識のまま晩御飯の準備。ここはやっぱり戦利品で祝杯ということで、ビールで乾杯、そしてワインもあける。

こういうわけで私の初めてのドイツ買出し旅行は幕を閉じた。今回はとにかく睡魔及び酔っ払いと戦った旅であった。

・・・が、次の日からすでにうちのス人兄は次の買出し旅行の計画を立てているという。。恐るべし兄。

2003.03.01

 

 

注:文中の地名(カタカナ)は全てスウェーデン語読み、しかも本場ドイツ語の発音を知らないスウェーデン人達が多分こうじゃないのかな?と想像して読む音をそのままカタカナにしたもの。したがってドイツ語でもなく、英語でもなく、さらにスウェーデン語でも、もしかしたらそうは読まないかもしれません。アルファベット表記は英語に沿って書いています。

追記:この後、私たちビール買出し団はデンマークを陸路で横断し、デンマークとドイツ国境の酒安売り店まで買出しにいく旅を強行。フェリーで煙に巻かれなくて済むし、フェリーの時間に合わせる必要もないので、運転が特に気にならなかったらこっちのほうが簡単かも。費用はフェリー代がかからないかわりにガソリン代がかかってくるので、同じくらい。

 

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